潤滑剤をコンタミネーションから守る
コンタミネーション(汚染・異物混入)による操業への影響を防ぐために
潤滑システムの潤滑剤がいつまでもきれいなままであることは期待できません。しかし、それが汚染されたらどうなるでしょうか? 最大の危険は、資本設備の運転が予期せず停止してしまうことです。
機器の生産設備投資 (CapEx)にかかるコストは、数万ドル~数百万ドルと高価なものです。これらの機器は、投資収益率を最大化するために工場や車両を最適な状態で稼働させています。設備が予期せず停止することは、機器が高額であるほど、生じるメンテナンス時間と機会損失が高くつくことになります。
たとえば、1 時間に 4 台の運搬トラックを満載する大型のローダーや掘削機は、稼働すれば所有者が1 時間に 12 万ドルを稼ぐ能力があるとします。しかし、ロードアームピンやタレットベアリングの汚れが原因で機器が焼き付けを起こした場合、問題が解決するまで 1 時間当たり 12 万ドルの損失が発生し、さらにベアリングやピンの交換費用もかかります。
汚染は、潤滑ポンプと計量システムの寿命と性能を低下させるため、潤滑装置にとっても致命的です。品質の高い潤滑ポンプは、メンテナンスなしでも 3 年以上稼動が可能ですが、コンタミネーションの発生はその寿命を数ヶ月~数週間に縮めてしまう要因になります。
異物粒子の大きさによっては、シーリングの間に挟まって研磨剤のように働き、金属を傷つけシーリングを削り取ります。ある時点で、許容誤差の減少が生じ、シーリング部分からグリースが流れ込むようになり、その結果、潤滑システムの機能が失われます。
潤滑ポンプやメーターを損傷する汚染された潤滑剤について考えてみてください。潤滑剤なしで 生産設備投資機器を稼動させることで起こる稼働停止時間やメンテナンス費用に比べれば、小さなコストです。
汚染の多くは運転環境に起因し、潤滑システムの補給作業中に混入します。潤滑システムの充填ポート、プラグ、 キャップが誤って外れたままになっていたり、正し く取り付けられていなかったりして、汚染物質(異物)が潤滑システム内に侵入するのが、よくあるケースです。
汚染物質には様々なものがあります。空気中のほこり、洗浄時の石鹸や洗浄水そのものなど、あらゆるものが潤滑システムの汚染物質とみなされます。さらに問題を複雑にしているのは、相溶性がない潤滑剤も問題を引き起こす原因となりうることです。相溶性のない潤滑剤は化学反応を起こし、固体粒子を形成したり、固化した潤滑剤がシステムを詰まらせたりします。潤滑剤は流れなければ役に立ちません。
潤滑装置が早期に故障した場合、潤滑剤のコンタミネーションが原因かもしれません。多くのユーザーは、設備寿命が想定より早く故障して初めて汚染に気づくものです。良質の潤滑フィルターを使用することで、グリースやオイルを適切に濾過し、潤滑装置と設備投資機器をトラブルから守ることができます。
汚染物質を通さない潤滑システムを作ることは可能かもしれませんが、そうすると高額なベアリングやピンアセンブリに汚染物質が入ってしまいます。潤滑が保護するはずのシステムそのものが汚染されてしまうのです。100 ドルのグリースインジェクターでも、早期警告システムとして機能します。システムの稼働停止を起こし 1 時間当たり 12 万ドルを失うくらいなら、インジェクターを失って、汚染を発見する方がましです。
ユーザーは、システムを保護し、潤滑油システムが汚染されないよう、密閉リザーバーと完全機械式自動充填シャットオフシステムがついた潤滑システムを探すべきです。ポートやキャップの取り外しや取り付けの回数は、少なければ少ないほど汚染の機会が減るのです。
コンタミネーションというリスクが存在し、設備稼働に甚大な影響を与える可能性があることを念頭に置き、機器を保護してください。汚染は、気づかれないまま時間をかけてゆっくりと蓄積し、習慣や、場合によっては製品設計の決定により激しくなります。それが臨界量に達したとき、汚染された潤滑剤は予期せぬ大混乱を引き起こすことになるのです。