EV電池アセンブリ-工程の感圧接着アプリケーション
EVバッテリーの設計者やメーカーの間で、感圧接着剤(PSA)がセルとパック間の接着やパウチセルのラミネーションに優れた接着性と柔軟性をもたらすことへの認知が高まっています。EVバッテリー用ホットメルト装置の導入を検討しているお客さまは、以下の記事を参考にグラコのホットメルト装置をご検討ください。
パッケージングから電池パックの生産まで
感圧接着剤(PSA)は一般的にパッケージング(封緘)のラインの最終工程で使用される材料ですが、近年、電気自動車(EV)用電池の生産における使用が急速に広がっています。ホットメルト材料は、セルとパックやパウチセルのラミネーション用途に必要な接着性と柔軟性を備えています。
PSAを塗布するには、溶融する必要があります。従来のホットメルト・システムは、外側から内側へとゆっくり材料を溶かしていきます。溶融した接着剤を長時間放置すると、炭化が生じます。炭化は接着力の低下、塗布時の不均一性、ラインの詰まり、熱伝導性の低下、安全性の懸念を引き起こす要因となります。
つまり、同じホットメルト装置でも、ダンボール箱の接着に使われる装置は電池パックの封入には適していません。EVの生産には、パッケージングの最終工程で求められるよりもはるかに高い精度とデータ制御が要求されるのです。
EV電池で感圧接着剤や、ホットメルト接着剤を塗布する装置には、次の点が求められます。
- オンデマンドで材料を溶かし、炭化を防止すること
- 閉ループ制御とデータトラッキング機能を搭載していること
- PLC(プログラマブルロジックコントローラ)やロボットアプリケータと統合可能であること
EV電池生産向けホットメルト装置に必要な5つの条件
EV電池生産ラインに適したホットメルト装置の選定には、以下の5つの条件が重要です。
1. システム性能を追跡して評価できるか
温度、生産レベル、接着剤の使用量などの重要な指標をモニターできることで、再現性が高まり、全体的な効率が向上します。
システムパフォーマンスをさらに高めるために、遠隔監視の導入を検討しましょう。スマートフォン、タブレット、またはコンピューターでリアルタイムの最新情報を得ることで、問題が生じる前に迅速な調整を行うことができます。
装置は、ロボット式またはガントリ式のいずれかの生産工程に組み込むことができるかが重要です。イーサネットIPまたはProfinet(例)に接続する通信ゲートウェイモジュール(CGM)が利用できることも、プロセス制御には不可欠です。
2. コストをどのように節約するのか
優れたホットメルトシステムは、次の分野で運用上のコスト削減を実現します。
- 時間短縮: 塗布前に接着剤を加熱する行程には、時間がかかります。システムが起動し、動作するのに必要な時間は、リザーバと溶融面のサイズに左右されます。材料の容量が大きいホットメルトタンクシステムは、生産スループットに必要な量のみを加熱するオンデマンド式のホットメルトシステムと比較すると、起動に時間がかかります。
- メンテナンスコストの削減: ホットメルトタンク、ホース、アプリケータ内で炭化した接着剤は、予定外のメンテナンス、ひいてはダウンタイムの原因となります。必要なときに必要量の感圧接着剤(PSA)を溶解するシステムを選べば、炭化やそれによって発生するメンテナンスコストも削減することができます。
- 材料節約と品質管理:材料の粘度が変わると流量が変わり、過剰塗布、接着剤の無駄、品質の低下につながる可能性があります。ビーズの大きさにわずかな誤差が生じただけで、EV電池の熱伝導率や重量に影響を及ぼします。
3. 安定した品質を維持できる装置か
一貫した品質は、溶解装置からアプリケータやノズルまで、感圧接着剤(PSA)がどのように取り扱われるかに左右されます。閉ループ制御のホットメルト装置は、適切に塗布するのに必要な、適切な材料温度と粘度を維持することができます。
また、閉ループ制御を行うことで、不安定なPSA品質を招く2大原因である炭化と熱衝撃を防ぐことができます。
- 炭化すると、溶融システム、ホース、ノズルに詰まりが生じ、ビーズの塗布が不安定になります。
- 溶融した材料に未溶融のペレットを加えると、熱衝撃が発生します。これにより粘度が変化し、接着性能の低下や塗布ムラが生じる原因となります。
4. メンテナンスはどの程度必要か
一般的に、炭化は、感圧接着剤(PSA)を長時間加熱し続けるシステムで発生します。炭化した物質がタンクの側面、ホース、アプリケーター、ノズルに付着し詰まりの原因となるため、清掃が必要になります。
炭化物を清掃するため、場合によっては、EV電池の生産を30分~数時間(システムが完全停止し、システムを設定温度まで再加熱する必要がある場合)停止しなければなりません。
オンデマンドの溶解装置では、必要なときに必要な分量だけの接着剤を加熱するため、炭化を防止できます。また、ウォームアップ時間も短縮でき、わずか15分程度で起動準備を整えることができます。
5. 装置オペレーターの安全性は確保されているか
手動ホットメルトシステムでの作業は危険です。タンクに接着剤を補充する間、オペレーターは溶融した接着剤に接近しなければならず、重度の火傷を負ったり有毒ガスを吸い込んだりする危険性があります。
接着剤の自動供給機能がある装置であれば、必要に応じて材料を自動で追加供給でき、オペレータが高温の接着剤と接触することはありません。