お客様の用途に適したポンプは?
エア駆動式ポンプ
エア駆動ポンプは長年にわたって塗料循環の業界で主流となっていますが、それには理由があります。シンプルで信頼性が高く、ゆっくりとした往復運動で、求心性や他の回転ポンプ技術のように塗料を傷めることがありません。このように多くの長所があるエア駆動ポンプですが、最大のメリットは危険(防爆)区域でも本質的に安全であるということです。
多くの塗料は溶剤ベースであるか溶剤成分を含んでいるため、通常、塗料調合室は危険区域と見なされます。米国電気工事規定 (NEC) によると、危険区域とは「引火性ガスや蒸気、引火性液体、可燃性粉塵、発火性繊維や飛散物によって火災や爆発の危険が存在する可能性がある場所」と定義されています。このような場所で使用する機器は、防爆区域に対応したものでなければなりません。エア駆動式ポンプは電力ではなく空気圧で作動し、電気的な着火源はありません。
さらに、エア駆動ポンプは、危険区域で使用するポンプとして比較的安価なソリューションです。電動モーターを使用する場合、配線や防爆コンジットに加え、第二者認証 (UL など) が必要になるため、通常コストが増加します。
エア駆動式ポンプの弱店
エア駆動ポンプには多くの利点がありますが、弱点もいくつかあります。エネルギー消費量が多いことは最大の弱点です。エア駆動式モーターはその性質上、10% 程度の効率しかありません。エア駆動ポンプは圧縮エアで作動するため、コンプレッサーを使用する必要があり効率があまりよくありません。24 時間 365 日この効率で運転するとエネルギーコストはかさみます。エネルギーコストが高騰しがちな昨今では、生産性の悪さは大きな課題となりえます。
また、エア駆動ポンプには着氷のリスクがあります。空気中の水分が排気の中で急速に膨張すると、冷えて水分が凍ることがあります。ルイジアナ州や韓国など、湿気が多く冷たい空気が存在する場所では特に危険です。このような環境でエア駆動ポンプに着氷すると、ポンプが作動しなくなることがあります。さらにエア駆動ポンプは作動時の音が非常に大きいです。作業者の多くは聴覚障害を防ぐため、近くで作業する際に耳の保護具を必要とします。
電動ポンプへの移行
前述の理由から、市場は電動往復ポンプなどの他のソリューションに移行しています。電動ポンプの最大のメリットはその高い効率性です。電動ポンプはエア駆動ポンプと比べ、4 ~ 7 倍の効率性があります。特に 1 日 24 時間連続運転する大型循環ポンプでは、これは相当なエネルギーとコストの節約になります。効率性だけでなく、電動ポンプは静かで、速度や圧力などの機能制御をより細かに行えます。例えばオペレーターが電動モーターをモニタリングすることで、システム内の部品が故障した場合システムを停止させることができます。
電動ポンプは、電力をポンプを駆動するための機械的な力に変換するために、ある種の電動モーターを必要とします。業界で使用される電気モーターにはいくつかの種類がありますが、AC 誘導モーターとブラシレス DC モーター (BLDC) が最も一般的です。
ほとんどの一般産業用途では、AC 誘導モーターが使われます。シンプルでコスト効率に優れ、速度コントロールの必要がなければ、いかなるコントロールも必要ありません (一般に可変周波数ドライブ (VFD) またはインバーターと呼ばれます)。一方、BLDC モーターはコントローラーが必要で、1970 年代後半に利用が始まった低コストなパワーエレクトロニクスが広まって以降、一般的になりました。
AC モーターと BLDC モーターの違い
AC 誘導モーターと BLDC モーターは非常によく似ていますが、主な違いはローターの構造にあります。
AC 誘導モーターは、ローターに磁石がない代わりに、一連のラミネーションと巻線があります。モーターのステーターに 3 相電力が印加されると、回転磁界が発生します。この回転磁界は、誘導によってローターに電流の流れを作ります。ローター電流は、ステーター界磁と相互作用してトルクを発生させる独自の磁石を作り出します。ほとんどの AC 誘導モーターは、コントローラーなしで AC 電源から直接運転できますが、多くのポンプの用途のように可変速度が必要な場合は、AC 電源とモーターの間に VFD を設置する必要があるため、この利点はなくなります
VFD は、モーターに供給される電力の周波数を変えることによってモーターの速度を変えます。例えば、定格 1800 rpm、60 Hz のモーターを 30 Hz で運転することにより、900 rpm まで減速することができます。VFD を使用しても、産業用 AC 誘導モーターの速度範囲は定格速度の約 30 ~ 130% と限られています。超低速で定格トルクを供給したり、失速したりする場合には最適ではありません。
BLDC モーター部品
AC モーター部品
あるいは、BLDC モーターは、ローターの巻線を一連の永久磁石に置き換えます。これらの磁石は磁場を作り出し、ステーターの磁場と相互作用してトルクを発生させます。しかし、BLDC モーターは、回転磁界を発生させるために単に 3 相電力に頼るのではなく、ステーターの磁界を正確にコントロールし、ローターの位置とその固定磁石に合わせる必要があります。ステーターフィールドは、AC 誘導モーターで使用される VFD とほぼ同じ装置によってコントロールされますが、入力が 1 つ追加されています。ローターに取り付けられたシャフトエンコーダーは、モーターコントローラーがローターフィールドとステーターフィールドを適切な配置に保つために必要です。ステーターの磁界を正確にコントロールすることで、速度、トルク、加速度を含むモーターの完全なコントロールが可能になります。BLDC モーターはゼロ速度で最大トルクを発生させることができます。また、永久磁石を使用したローターは、対応する誘導ローターよりも軽量です。この 2 つの特性により、BLDC モーターは負荷条件の変化に対してより速く反応することができます。
AC 対 BLDC モーター
AC 誘導モーターのほうが BLDC モーターよりも一般的なのに、なぜ作業者はBLDC モーターのポンプを選ぶのでしょうか? それは、BLDC ならではの利点や特徴があるからです。
- 高性能:BLDC モーターは消費電力と発熱を抑えます。
- トルクと速度の正確なコントロール:ポンプはシステム需要の変化に迅速に対応することができます。ポンプはまた、モーターがゼロ速度でフルトルクを発生させる「デッドヘッド」機能を備えています。さらに、モーターは一定のトルクを発生させることができます。これにより、モーターをコントロールして一定の圧力を発生させることができ、エア駆動ポンプと同様に循環システムの変化に反応します。
- ローター慣性の低下:この結果、システム圧力の変化に対するポンプの応答は、同様の動力を持つ AC 誘導モーターよりもかなり速くなります。
- 省スペース:どのような出力でも、BLDC モーターは一般的に AC モーターよりも小型であるため、ポンプも小型化できます。
BLDC モーターの効率の向上は、以下のグラフで見ることができます。グラフ 1 は AC 誘導モーターと BLDC モーターの比較です。グラフ 2 は、さまざまなタイプの循環ポンプの機械的効率に対する電気的効率の合計を示しています。
シンプル・イズ・ベスト
低慣性と優れたトルクコントロールに加えて、BLDC モーターは、需要の変化、正確な圧力コントロール、および圧力を維持しながらポンプを「デッドヘッド」にする能力に対してポンプがより速く反応することを可能にします。BLDC モーターは本質的に応答が速いため、機械的な接続を大幅に簡素化できます。
どちらのタイプのモーターも、モーターの回転運動を容積押出式ピストンポンプの線形往復運動に変換する方法が必要です。AC 誘導モーターは比較的一定速度で動作し、動的応答が遅いため、これを達成するには複雑な機械的機構が必要です。例えば、カムやヨークの配置を使用してもよいでしょう。多くの場合、これらの装置は実際のモーターよりも 2 ~3 倍大きいです。また、摩耗箇所やベアリングがあるため壊れたり摩耗したりしやすく、メンテナンスや交換に高額な費用がかかります。
以下は、AC 誘導モーター駆動ポンプの例です。AC モーター、ギアボックス、そしてかなり大きなカムドライブシステムはすべて別個のものですが、回転運動を線形運動に変換するために必要なものです。カムドライブシステムには複数の部品があり、どれも常に摩耗しています。
これに比べ、塗料循環ポンプシステムでは、回転運動を線形運動に変換するために、小型 BLDC、2 段ギア減速、単純なラック・ピニオンドライブシステムを使用することができます。
往復運動を行うには、BLDC モーターの回転方向を逆にするだけです。低慣性と正確なトルクコントロールにより、BLDC モーターはシンプルで効率的です。ポンプだけでなく、この種のソリューションは、超精密高速 CNC 加工機など、他のオートメーション機器でも一般的です。
モーター循環
結論
塗料循環システムに BLDC 電動ポンプを導入することで、最適な効率、コントロール、性能を達成することができます。さらにBLDC 電動ポンプは、簡単な接続機能とその静粛性で作業環境を改善し、稼働音が静かなためオペレーターはポンプの近くで稼働状態をモニタリングし、継続稼働させることができます。